グルダ&ウィーン・フィルハーモニー管楽アンサンブルによるモーツァルトとベートーヴェンのピアノ五重奏曲を聴いて

グルダ&ウィーン・フィルハーモニー管楽アンサンブルによるモーツァルトとベートーヴェンのピアノ五重奏曲(1960年録音)を聴いてみました。
(各楽器の奏者は、お手数ですが添付写真をご参照ください。)

デームス、スコダとともに「ウィーン三羽烏」と称されていたうちの一人のグルダと、ウィーン・フィルの首席奏者とがコンビを組んでの演奏は、なんとも典雅なものとなっています。そして、純粋な美に溢れている。

どこにも恣意的な表情が含まれておらず、純真無垢な音楽が鳴り響いています。しかも、弾力性を持っていて、天真爛漫でもある。力み返ったところは微塵もないのに、生気に溢れている。そして、ときに哀愁の漂う音楽世界が広がってゆく。
グルダの粒立ちの鮮やかなピアノが奏でる音楽は、明朗快活であります。そこに添えられる、ウィーン・フィルの4人の管楽器奏者が奏でる、柔らかくて優美で、鄙びた響き(特に、マイヤーホーファーのオーボエに「鄙びた」風情が強く感じられる)の、なんと魅惑的なこと。
更に言えば、古雅な雰囲気が漂っている。この辺りは、「鄙びた響き」に依るのでしょう。と言いつつも、ウェストミンスター・レーベルが1950年代に録音したウィーン・フィルのメンバーによる一連の演奏に比べると、現代の感性に通じるスマートさのようなものや、機能性の高さが備わっている。そのために、過度に古びた演奏とは感じられない。
そんなこんなによって生み出される、愛らしくて、愉悦感に満ちていて、ちょっぴりノスタルジックで、しかも、雅趣に溢れている音楽世界は、惚れ惚れするほどに美しい。

音楽を聴く幸福感をジックリと味わうことのできる、素敵な素敵な演奏であります。