ルービンシュタイン&シェリング&フルニエによるブラームスのピアノ三重奏曲第1番を聴いて
ルービンシュタイン&シェリング&フルニエによるブラームスのピアノ三重奏曲第1番(1972年録音)を聴いてみました。
作品番号8が振られているこの曲は、ブラームスが20歳の時に書き上げられたものになります。
その音楽はと言いますと、エネルギッシュでロマンティックな味わいを湛えたものとなっています。全編を通じて、熱気を孕んでいる音楽が鳴り響いてゆく。若きブラームスの意欲の詰まっている音楽だとも言いたい。
第2楽章の中間部に出てくるメロディが、交響曲第2番の冒頭楽章の第2主題に酷似しているのがまた、なんとも興味深いところ。この部分に限らず、全編を通じて交響曲第2番に通じるような伸びやかさを持った音楽にもなっています。
さて、ここでの演奏はと言いますと、実にスケールの大きなものとなっています。白熱の演奏が展開されているとも言いたい。壮麗で、情熱的で、聴き手を圧倒するようなエネルギーを宿している。
しかも、演奏から気品が湧き立ってくるかのよう。極めて熱い演奏となっているのですが、それが大袈裟に聞こえるようなことはなく、とても端正でもある。作品の内側から、熱気が滲み出している、といった演奏ぶりだとも言いたい。そして、音楽に対する情熱と真摯な姿勢が、ヒシヒシと感じられる。
更に言えば、ルービンシュタインが加わっていることによって、華麗な演奏になっている、といった印象を受ける。とは言え、外見的な効果のみを狙った、ショー的な華やかさではありません。気宇の大きさや、壮麗さに繋がるような華やかさだと言えましょう。もっと言えば、誠実さを基盤にした華やかさだとも思える。
この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏。
いやはや、なんとも立派な、そして、頗る魅力的な演奏であります。