マタチッチ&ウィーン放送響によるスメタナの≪わが祖国≫を聴いて

マタチッチ&ウィーン放送響によるスメタナの≪わが祖国≫(1982年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

遅めのテンポを基調としながら、途轍もないまでに巨大な生命力を宿した音楽が鳴り響いています。巨人的な≪わが祖国≫。更には、頗る骨太な演奏でもある。
地響きを立てながら、音楽は突き進んでゆくかのよう。重々しくて、豪壮で、かつ、十分な推進力を蓄えながら。しかも、堂々としていて厳粛で、荘重であり、そのうえで、壮絶で苛烈な音楽となっている。
およそ、≪わが祖国≫がこのような様相を呈しながら響き渡るのは、マタチッチが指揮した時以外には有り得ないのではないと言えるのではないでしょうか。そう、マタチッチ&N響による≪わが祖国≫(1968年ライヴ)もまた、同じような音楽世界が広がっていたのであります。
そのうえで、この音盤が貴重であると思えるのは、ウィーン放送響のまろやかな響きが伴っているということ。マタチッチの音楽づくりが決して鈍重なものとならずに、しなやかで深みのある肌触りを感じさせてくれるのは、ウィーンに本拠を置くオーケストラのなせる業だと言えましょう。しかも、過度に艶やかになり過ぎずに、良い意味での中性的な(ニュートラルな、と表現しても良いかもしれません)性格を有しているのが、いかにも放送局に所属しているオケらしいところ。

これはもう、破格の演奏だと言えましょう。超弩級の≪わが祖国≫。
ライヴで、このような記録が遺されていることに、いくら感謝してもし過ぎることはないでしょう。
1人でも多くの音楽愛好家に聴いて欲しい、見事な演奏であります。