リヒテル&ムラヴィンスキーによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を聴いて
リヒテル&ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(1959年録音)を聴いてみました。
モノラルでのセッション録音になります。
リヒテル(1915-1997)による同曲のセッション録音は、他にアンチェルと共演したものと、カラヤンと共演したものも残されていて、トータルで3種類があります。その中では、この演奏から3年後に録音されたカラヤン&ウィーン響との共演盤が最もポピュラーな存在であると言えそうですが、このムラヴィンスキーとの共演盤もまた、実に魅力的なものとなっています。
このとき、リヒテルは44歳。壮年期のリヒテルの演奏と言えましょう。
さて、ここでのリヒテルによる演奏ですが、なんとも強靭なものとなっています。鮮烈で、猛々しくて、宏壮でもある。更に言えば、切れ味が鋭くて、精悍で、目鼻立ちがクッキリとしている。
全体的に、頗る壮健で、スケールの大きな壮麗な音楽が鳴り響いています。
それでいて、ロマンティシズムに溢れている。大熱演でありつつも、透徹した響きがしてもいる。正確無比にして、隅々まで磨き抜かれた演奏。そして、音楽としての佇まいが誠に美しい演奏。
そのようなリヒテルをバックアップしているムラヴィンスキーがまた、なんとも素晴らしい。毅然としていて、明晰で、推進力に満ちていて、壮大な音楽を築き上げてくれています。曖昧さが全くなく、峻厳な音楽が立ち昇ってきているところも、いかにもムラヴィンスキーらしい。強靭にして、精悍な演奏ぶりが示されていて、その点でも、リヒテルの共演者として誠に相応しいと思える。
リヒテルとムラヴィンスキーによる共演盤は、これが唯一なのではないでしょうか。少なくとも、セッション録音は、これが唯一のはず。とても貴重な記録であります。
(ここで、ネットで調べてみますと、ブラームスのピアノ協奏曲第2番が、1951年のライヴ録音で残されているようです。)
そして、そのようなことを度外視したうえでも、この作品の魅力を存分に味わうことのできる、なんとも素晴らしい演奏であります。