コンドラシン&レニングラード・フィルによるマーラーの≪悲劇的≫を聴いて
コンドラシン&レニングラード・フィルによるマーラーの≪悲劇的≫(1978年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
コンドラシンは1978年に西側へ亡命していますので、これは旧ソ連で活動していた最後期の記録ということになります。
さて、ここでの演奏はと言いますと、速めのテンポでキビキビと進めています。とてもスタイリッシュなものとなっている。快活で、生気に溢れてもいる。演奏時間は65分強。疾駆感を伴っているマーラー演奏だとも表現したくなる。
しかも、力で押し切ろうとしたり、乱暴であったり、といったようなところは皆無。折り目正しくて理性的であり、目鼻立ちがクッキリとした、巧緻な演奏が繰り広げられています。明快にして、颯爽としてもいる。
情念的でないマーラー演奏。ドロドロとしたところがない。とてもスッキリとしていて、竹を割ったような演奏だと言えそう。その分、あまりマーラーらしくないとも思えるのですが、このようにクリアにしてヴィヴィッドに演奏してくれると、爽快な気分に浸ることができる。しかも、とても精巧な演奏となっている。この辺りは、レニングラード・フィルの技術の高さに依るところも大きいのでしょう。
そのうえで、十分にエネルギッシュで、ドラマティックな演奏となっています。そういった様相が、なんの誇張もなく表されている。
爽快感を味わえるマーラー演奏。しかも、とても巧緻で鮮やかな演奏となっている。
なんともユニークなマーラー演奏。このようなマーラーも、個人的には大歓迎であります。