クレンペラー&フィルハーモニア管によるチャイコフスキーの交響曲第4番を聴いて
クレンペラー&フィルハーモニア管によるチャイコフスキーの交響曲第4番(1963年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
キッチリカッチリとした中にも、逞しい生命力の宿っている演奏となっています。
決して華麗さや派手さを強調するようなことはなく、滑らかに仕上げてゆこうといった意図が前面に押し出されている訳でもない。むしろゴツゴツとした手触りのするチャイコフスキー演奏が繰り広げられている。浮ついたところのない、どっしりとした構成の上に築かれてゆくチャイコフスキー演奏。とても堅固な演奏となっている。その様は、いかにも「ドイツ人指揮者」によるチャイコフスキーといった感じであります。
しかも、格調の高さが感じられる。音楽が示している佇まいが、とても端正でもある。
そのような音楽づくりを土台にしながら、充分なる推進力を備えた演奏が展開されています。必要最小限の華やかさを備えている。そして、十分にドラマティックでもある。最終楽章などでは、ジックリとした足取りの中からエネルギッシュな音楽が響き渡ることとなっている。
その一方で、第2楽章で表出されている清冽なロマンティシズムなどは、誠に美しい。それは、純粋なる美しさと呼びたくなるようなものとなっています。それでいて、中間部での音楽の歩みが、とても折り目正しいものとなっているのが個性的でもある。
ここで少しく細かな話しをします。
第1楽章での真ん中辺りで、アンサンブルの乱れが見られます。この楽章は、独特の拍節感を持っており、小節や拍の頭がハッキリせずに、演奏するに当たってはちょっとした運動神経を必要とします。反応への機敏さが求められもする。その辺りへの対処に失敗してしまったのでしょうが、それがまた、愛嬌にも感じられた。
なかなかにユニークなチャイコフスキー演奏と言えましょうが、立派な、そして魅力的な演奏であります。