スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデンによるマーラーの≪巨人≫を聴いて

スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるマーラーの≪巨人≫(1962年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

こけおどしな表現が全く見当たらない、真摯な演奏が繰り広げられています。
音楽づくりが堅固で、構成力の高さが感じられます。その一方で、スッキリとした佇まいをしている。情念的であったり、ドロドロしていたり、粘り気を伴っていたり、といったことはなく、清々しさが感じられ、清潔感に満ちている。そして、格調の高い音楽が鳴り響くこととなっている。
しかも、生気に富んでいます。過度にはしゃぎ回るようなことは皆無でありつつも、とても快活で明朗な音楽が響き渡っている。そのことがまた、若きマーラーの手による作品に織り込まれている青春像を、明瞭かつ清浄な形で描き出してくれていると言いたい。
更には、最終楽章では、必要十分に劇的な音楽が奏で上げられている。
そこに添えられているSKDのピュアで、かつ、キリっとした表情を湛えている美音がまた、堪らなく魅力的であります。派手さはないものの、艶やかな響きをしている。そして、とても冴え冴えとしていて、凛としてもいる。

スウィトナーによるマーラーも、SKDによるマーラーも、音盤の数は少ないように思います。そういう意味では、貴重な記録である訳ですが、ただ単に貴重なだけではない、聴き応えの十分な、頗る素敵な演奏になっています。
あまり話題に上ることの多くない音盤だと言えるかもしれません。それだけに、多くの音楽愛好家にお薦めしたい、とても魅力的な≪巨人≫であります。