ビーチャム&ロイヤル・フィルによるディーリアス管弦楽曲集を聴いて
ビーチャム&ロイヤル・フィルによるディーリアス管弦楽曲集(1956,57年録音)から下記の4曲を聴いてみました。
≪ダンス・ラプソディー≫第2番
≪春初めてカッコウを聞いて≫
≪河の上の夏の夜≫
≪ブルッグの定期市≫
このうち、≪春初めてカッコウを聞いて≫と≪河の上の夏の夜≫は、『小オーケストラのための2つの小品』を構成する2曲となります。
克明な筆致によって奏で上げられているディーリアス演奏であります。
なるほど、『小オーケストラのための2つの小品』での2曲や、≪ブリッグの定期市≫の冒頭部分などでは、涼し気な音楽が鳴り響いています。抒情性が豊かでもある。その演奏ぶりは、オーソドックスなディーリアス演奏で触れることのできる性格を備えたものだと言えそう。しかしながら、ただそれだけではなく、シッカリとした起伏が付けられていて、なおかつ、輪郭線が明瞭なものとなっている。そう、決して朧げな演奏となっている訳ではない。単にムーディーな雰囲気を漂わせる、といったものになっている訳でもない。
そこへゆくと、≪ダンス・ラプソディー≫第2番や≪ブリッグの定期市≫の主部の多くでは、もっと明快な演奏ぶりが示されていると言えましょう。そのうえで、場合によっては、適度に情熱的であったり、骨太であったり、逞しさが滲み出ていたりもする。彫りの深い演奏となってもいる。
それでいて、必要十分な清涼感を伴っています。ごり押しするような音楽には全くなっておらずに、十分にデリケートでもある。その辺りに、何とも言えない奥ゆかしさが感じられもする。
聴き応え十分で、なおかつ、懐の深さのようなものが滲み出ているディーリアス演奏。
なんとも素敵な演奏であります。