クレーメル&マイスキーとバーンスタインによるブラームスの二重協奏曲を聴いて
クレーメルとマイスキーとバーンスタイン&ウィーン・フィルによるブラームスの二重協奏曲(1982年ライヴ)を聴いてみました。
熱気に溢れていて、この作品が持っているロマンティックな表情も濃密に描き出されている、見事な演奏であります。
個人的には、オイストラフ&ロストロポーヴィチ&セル盤、パールマン&ロストロポーヴィチ&ハイティンク盤とともに、この作品のベスト3を形成している音盤であります。
クレーメルのヴァイオリンが、響きや造形やにおいて、やや細身であるように思えます。これが、例えばオイストラフやスターンあたりが弾いていたならば、もっと重量級の演奏となっていたことでありましょう。私の好みからしますと、この作品におきましては、そういった傾向の演奏のほうを歓迎したいところであり、細身のクレーメルが、個人的にはちょっと引っかかっているというのが正直なところであります。
しかしながら、ここでのクレーメルの体当たり的な演奏ぶりは、とても尊いものであるように思えます。線は細くとも、気魄は充分。しかも、クレーメルが弾いてくれているからこその、繊細な味わいや、抒情味の豊かさといった、プラス要素が与えられている。そのために、多面的な面白さが加わることとなっているように思われます。
そこへゆくと、もう一人の独奏者であるマイスキーは、逞しくて雄弁。理性的でありながら、情熱的でもある。響きは、キリッと引き締まっていつつも、ふくよかさが備わってもいる。気魄が漲ってもいる。それはもう、作品とがっぷり四つに組みながらの、迫真の独奏が繰り広げられています。自在感に溢れてもいる。
しかも、ここでのマイスキーによる演奏は、かなり思索的であるとも言えそう。そのことによって、ただ単に熱いだけではなく、音楽に陰りが加えられることになっています。それがまた、ブラームスの作品においては、とても似つかわしく思える。
そのような2人の独奏者を支えながら、音楽全体をがっちりと束ねているバーンスタインの、なんとも素晴らしいこと。熱くて、逞しくて、しかも情感豊かな音楽を奏で上げてくれています。ロマンティックな感興は充分で、しかも、音楽がうねりにうねっている。そんなこんなが、この作品にはうってつけであると言えましょう。
更には、ウィーン・フィルの艶やかな響きがまた、堪らなく魅力的であります。輝かしさや厚みも充分。
この作品の素晴らしさや、予期せぬ魅力や(ここのところは、クレーメルの功績だと言えましょう)を、たっぷりと味わうことのできる、素敵な素敵な演奏であります。