サージェント&ロイヤル・フィルによるスメタナの≪わが祖国≫を聴いて

 

サージェント&ロイヤル・フィルによるスメタナの≪わが祖国≫(1964年録音)を聴いてみました。

サージェント卿(1895-1967)は、お国物のイギリス音楽での演奏に定評があったが、シベリスでも素晴らしい演奏を残してくれています。そして、このスメタナでも、実に素敵な演奏を繰り広げてくれている。
ここでの演奏はと言えば、誠実で、紳士的な薫りの漂ってくるものとなっています。折り目正しくて、格調の高い音楽が奏で上げられている。すなわち、サージェントの美質が、クッキリと刻まれている演奏となっている。

大上段に構えたり、これ見よがしな劇的効果を狙ったり、或いは、この作品が持っている土俗性を強調したり、といった音楽づくりは為されていないと言えましょう。「純音楽的な佇まいの美しさを前面に押し出そう」といった意志の貫かれていると演奏だと言いたい。
それでいて、決してひ弱な演奏になっている訳ではありません。生命力に溢れていて、逞しさにも不足はない。なおかつ、背筋がピシッと伸びていて、作品が持っている音楽的な起伏や、ドラマ性が、クッキリと描き出されている。それは特に、第3曲目の「シャールカ」以降での、音楽的な頑健さが増したナンバーにおいて顕著であるように思えます。とりわけ、最後の2曲、「ターボル」と「ブラニーク」では、骨太な音楽が奏で上げられている。充分に情熱的でもある。と言いつつも、下品になるようなところが微塵も感じられないのが、サージェントらしいと言えましょう。
更に言えば、これは全編を通じて当てはまることなのですが、過度にならない範囲での豊かな歌が備わってもいる。そう、音楽が豊かに息づいていて、豊饒な音楽が奏で上げられているのであります。

作品の魅力をジックリと味わいながら、格調の高い音楽に触れることのできる、聴き応え十分な素敵な演奏。
話題になることのあまり無い演奏だと言えるかもしれませんが、この演奏、お薦めです。