サージェント&ウィーン・フィルによるシベリウス管弦楽曲集を聴いて
サージェント&ウィーン・フィルによるシベリウス管弦楽曲集(1961年録音)を聴いてみました。
収録されている作品は、下記の4曲。
≪フィンランディア≫
≪カレリア≫組曲
≪エン・サガ≫
≪トゥオネラの白鳥≫
私個人としましては、シベリウスの管弦楽曲集の中で最右翼に置きたい音盤が、当盤になります。私にとっての、宝物の1枚。
ここに収められている演奏たち、それは、逞しい生命力を宿したものとなっています。なんとも頑健で骨太な演奏ぶりが示されている。しかも、熱気に包まれていて、音楽が渦を巻いているとも言えそう。しばしば、音楽を力強く咆哮させたりして、抉りの鋭い音楽が奏で上げられてもいる。
と言いつつも、荒々しかったり、過剰にワイルドであったり、といった演奏になっている訳ではありません。むしろ、洗練味を帯びている。エレガントで、格調高くもある。この辺りは、ウィーン・フィルを得ていることが大きく影響しているのかもしれません。或いは、サージェントのイギリス人気質に依るのでしょうか。
それでいて、やはり、頗る熱狂的な演奏だという思いを強くする。それは、しっかりと足を地に付けながらの熱狂、とでも言えば良いのでしょうか。
そして、しばしば、音楽が地底からムクムクと湧き上がってくるような生命力の豊かさが示される。それはもう、巨大なエネルギーを蔵しながら隆起してくるかのよう。そして、そのエネルギーは、適宜、適正に放たれてゆく。
そのような中で、元々があまり動的ではないと言えそうな≪トゥオネラの白鳥≫においても、決してエネルギーがあからさまに外に向かって発散されてゆくという演奏ぶりではないものの、内側に大きな「熱量」が秘められてゆくような演奏となっている。そのうえで、音楽が随時うごめいている、といった体を見せてくれている。
そんなこんなもあり、全4曲において、誠に彫琢の深い音楽が現れています。そして、克明にして端正な造形が刻まれている。そのうえで、情感豊かでもある。
しかも、ウィーン・フィルのしなやかな演奏ぶりと、艶やかで潤いのある響きが、実に魅力的。そのうえで、ウィーン・フィルとは思えないほどにパワフルであったりもする。瞬発力の高い反応が示されていたりもする。
精彩に富んでいて、生命力に溢れている、なんとも見事で魅力的な演奏。
これはもう、神品だと言いたくなります。