ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンによるシューベルトの交響曲第5番を聴いて
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューベルトの交響曲第5番(1980年録音)を聴いてみました。
この可憐でチャーミングな作品に、キリリとした表情を与えてくれている、素敵な演奏。そんなふうに言えるように思えます。
SKDの美質を最大限生かしながら、端正で伸びやかで、誠実味に溢れた音楽を奏でてゆくブロムシュテット。基本的にはどっしりと構えた音楽づくりでありつつも、溌剌としていて、屈託がなくて、晴れやかな演奏が繰り広げられている。
(第2,3楽章では、そこはかとない「憂い」や「焦燥感」が漂う演奏となってもいます。)
そのうえで、いわゆるビーダーマイヤー的(小市民的な慎ましさ、とでも言えば良いでしょうか)な情趣を大事にしながら、可憐な音楽世界を描いてゆこうという、そのような演奏スタイルが採られていると言えそう。
しかも、清潔感に溢れていて、充実感もたっぷり。凛としていて、かつ、毅然としてもいる。それでいて、音楽全体が存分に弾けている。贅肉のない引き締まった演奏ぶりでありつつも、潤いがあって、必要十分なふくよかさが存じられもする。
そして、何よりも、隅から隅まで、ことごとくが美しい。それは、響きにおいても、音楽が示している佇まいにおいても。これらの点はまさに、SKDのオケの美質にブロムシュテットの音楽性や人間性が加味された結果である、と言えるのではないでしょうか。なんの穢れもない、純美な音楽をここに聴くことができる。そして、聴いていてウットリとしてくる。
作品も演奏も、音楽を聴く歓びや幸せを心行くまで味わうことのできる、素敵な素敵な音楽であります。