コリン・デイヴィス&ボストン響によるドビュッシーの≪海≫と≪夜想曲≫を聴いて
コリン・デイヴィス&ボストン響によるドビュッシーの≪海≫と≪夜想曲≫(1982年録音)を聴いてみました。
太い筆致で描かれてゆくドビュッシー演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。壮健で骨太で、そして堅牢な音楽世界が広がっています。
とても気宇が大きい演奏となっている。更に言えば、気風が良くて、一本気で、血気盛んでもあるように思える。
そのために、ドビュッシーにしては、頑健に過ぎる演奏ぶりだと言えるかもしれません。意気軒高なドビュッシー演奏。曖昧さの含まれていない音楽づくりが施されているドビュッシー演奏だとも言えそう。
そのようなアプローチもまた、ドビュッシーの音楽世界を描き出すに当たって、有効なのではないでしょうか。ドビュッシーの音楽は、精妙で繊細で、メロウでエレガントでありつつ、逞しい生命力を宿してもいる訳ですので。
しかも、凝縮度が高くて、かつ、克明な演奏ぶりが示されている。曖昧模糊としたところが微塵も感じられない演奏だとも言いたい。その点は、同じボストン響とコンビを組んでいたミュンシュにも相通じるところがあるように思えます。
そのボストン響がまた、腰の据わったどっしりとした響きをベースとした上で、芳醇な音を響かせてくれていて、なんとも魅力的であります。それはまさに、まろやかにブレンドされた響きだと言えましょう。そのうえで、落ち着いた色合いをしていつつも、底光りするような美しさを湛えている。この演奏を、過剰に硬質なものにしていないのも、ボストン響の体質に依るところが大きいように思えます。
ユニークなドビュッシー演奏だと言えるのでしょうが、なんとも素敵な演奏であります。