アッカルド&デュトワ&ロンドン・フィルによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて

アッカルド&デュトワ&ロンドン・フィルによるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番(1975年録音)を聴いてみました。

アッカルドの、確かなテクニックを土台にしながら、甘美な音色で敷き詰めてゆく演奏ぶりは、まさにパガニーニに打って付けだと言えましょう。
そのテクニックは、決して派手ではないのですが、パガニーニが要求している高度な技術(例えば、右手で弓を操りながら同時に左手でピチカートを入れてゆく、随所にフラジオレットが要求されている、等々)の数々を、安定感抜群に「現実の音」に変えていく。あまり曲芸的な匂いを出さずに、頗る端正に。
そのうえ、音は誠に艶やか。そして、実に明るい。それはもう、イタリアの真っ青な空に直結するような音たちだと言えそう。音楽全体が、晴れ渡ったものとなっています。しかも、歌心に満ちていて、身のこなしがしなやかで、伸びやかでもある。
そのような演奏ぶりによって、屈託のない、かつ、華やかな音楽世界を描き上げてゆく。暖かみがありつつも、冴え冴えとしてもいる。
デュトワによるサポートもまた、颯爽としていて、かつ、適度な充実感が込められたものとなっています。デュトワらしい、華やかにしてエレガントな雰囲気が漂ってもいる。そのうえで、重からず、軽からずといった演奏ぶりが、アッカルドの独奏ぶりにマッチしていて、素敵な花を添えてくれています。

世評のとても高い、この演奏。
パガニーニの協奏曲の魅力を堪能することのできる、素敵な素敵な演奏であります。