スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリンによるベートーヴェンの≪英雄≫を聴いて
スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリン(SKB)によるベートーヴェンの≪英雄≫(1980年録音)を聴いてみました。
スウィトナー(1922-2010)は、1980年代の初頭にSKBとベートーヴェンの交響曲全集を完成させていますが、この≪英雄≫は、その最初に録音されたものなります。そして、スウィトナーにとって、正規録音での最初のベートーヴェンの交響曲の録音にもなっているとのこと。
さて、ここでの演奏から感じ取れることについてであります。
スウィトナーらしい、誠実さの滲み出ている、折り目正しい演奏となっています。楷書風の演奏であるとも言えそう。更には、贅肉を削ぎ落とした、キリっと引き締まった演奏が繰り広げられている。
≪英雄≫という作品は、かなりカロリー高めの音楽だと言えるのではないでしょうか。聴いていて、お腹いっぱいになりがち。そのような中では、この演奏は、胃もたれのしない≪英雄≫だと言いたくなります。しかしながら、決して薄味ではありません。やるべきことをキッチリとやり尽していて、充実感がタップリ。
そのうえで、全編を通じて晴れやかな音楽となっている。それは、第2楽章の「葬送行進曲」においても然り。足を引きずりながらの、沈鬱な音楽にはなっておらずに、清々しい。こんなにも爽やかな気分にさせられる「葬送行進曲」は珍しいのではないでしょうか。しかも、毅然としているために、軽々しい音楽に聞こえてこないところが、なんとも立派。
聴いていて疲れない、体に優しい≪英雄≫。それでいて、この作品の手応えも、シッカリと感じさせてくれる演奏。
独特の魅力を持っている、素敵な演奏であります。