カンテルリ&フィルハーモニア管によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて
カンテルリ&フィルハーモニア管によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫(1955年録音)を聴いてみました。
1956年に、36歳の若さで飛行機事故によって夭折したカンテルリ。将来を嘱望されていて、トスカニーニが自分の後継者だと目していた指揮者でもありました。
そんなカンテルリによる≪イタリア≫は、誠に流麗なもの。更に言えば、イタリア人指揮者ならではの晴れやかさや輝かしさが感じられます。歌心に溢れてもいる。
と言いつつも、単に弾けまくっている演奏ではありません。むしろ、凝縮度や集中度の高い演奏となっている。そのような音楽づくりを通じて、作品の内側からエネルギーが放出されるような演奏になっているとも言えそう。
その一方で、音楽の流れがしなやかで、伸びやか。翳りの無い、明朗な演奏が展開されています。目鼻立ちがクッキリとしてもいる。
若くして世を去ったカンテルリによるセッション録音は、決して少なくはありませんが、それでも、決して多いとも言えそうにない。その中でも、この≪イタリア≫は、端正な佇まいをしていることもあり、セッション録音を通じてカンテルリの演奏を味わうには、格好の1枚であると言えるのではないでしょうか。
多くの音楽愛好家に聴いて欲しい、素敵な、そして、貴重な1枚であります。