フリッチャイ&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番を聴いて
フリッチャイ&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番(1949年録音)を聴いてみました。
凄まじいまでの逞しい生命力を宿している演奏であります。強靭さを持っていて、鋭利であって、しかも、頗る緻密で精巧な演奏となっている。雄弁にして、凄絶な演奏となっている。
情熱、逞しさ、壮麗さ、尖鋭さ、精密さ、詩情、更には、演奏に説得力を与える音楽センス等々、およそ演奏に求められる要素を全て備えた、驚異的な演奏だと言いたくなります。
音楽そのものが、ときに唸りを上げ、ときにすすり泣き、ときに疾風怒濤の勢いで駆け抜けながら、ときに切れ込み鋭く、ときに情感豊かに、奏で上げられてゆく。しかも、全く乱れがない。
表情は千変万化していながらも、空中分解するようなことはない。いや、極度なまでに集中力の高い演奏となっています。外に向かってのエネルギーの放出が強大でありつつ、内側へ凝縮しようとする力が非常に強くもある。凄まじいまでにドラマティックで、かつ、スリリングでありながら、どこにも誇張の感じられない演奏となっている。そして、統制のとれた演奏が展開されてゆく。
更に言えば、何から何までが、この作品の核心に肉薄していこうというという、強い意志に裏付けられた演奏が繰り広げられている。そのようにも言いたくなります。
畏敬すべきほどに見事な演奏。
破格の素晴らしさを持っている演奏であります。