ロストロポーヴィチ&ジュリーニ&ロンドン・フィルによるドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いて

ロストロポーヴィチ&ジュリーニ&ロンドン・フィルによるドヴォルザークのチェロ協奏曲(1977年録音)を聴いてみました。
ロストロポーヴィチ(1927-2007)がちょうど50歳だったときの演奏となります。

ロストロポーヴィチは、生涯に7回、ドヴォルザークのチェロ協奏曲をセッション録音しており、このジュリーニ盤は6回目となるもの。最も世評が高い音盤は、5回目の録音であったカラヤン盤(1968年録音)ということになるでしょうか。
そのカラヤン盤は、ソロと指揮とが火花を散らすような、誠に熱の籠ったスリリングかつダイナミックな演奏でありました。とても濃密でもありました。それに比べますと、ジュリーニ盤はかなり冷静な演奏だと言えそう。サラリとしてもいる。

とても端正な演奏ぶりが示されています。そして、歌い込み方が繊細である。時に儚さのようなものさえ漂ってくる(例えば、第3楽章の第2主題など)。そう、ノスタルジックな雰囲気が、演奏の端々から感じられるのであります。それは、この作品が元来持っている性格でもあると言えましょう。
その一方で、やはりと言いますか、彫琢が実に深い。コントラストがくっきりと付いている。内面性の高さ、といったようなものでは、カラヤン盤よりもこちらのほうが優っているように思えます。
そして、テクニックの安定感は抜群で、揺るぎない音楽が奏で上げられています。

そのようなロストロポーヴィチに対して、ジュリーニがまた、実にコクの深い演奏を繰り広げてくれている。先ほど述べた内面性の高さは、ジュリーニの音楽づくりに依るところも大きいのではないでしょうか。
遅めのテンポを採りながら、慌てず騒がず、音楽をジックリと奏で上げてゆくジュリーニ。ちょっと渋い演奏ぶりだとも感じられますが、なんとも風格豊かな演奏ぶりが示されています。
ある種、楷書風のキッチリキッチリとした演奏だと感じられつつ、局面ごとの表情づけが細やかでもある。音楽センスの高さを感じさせる好サポートであります。

カラヤン盤とは全く違ったロストロポーヴィチの姿を見ることができつつ、やはりロストロポーヴィチらしい面がシッカリと出ている演奏。そこに、ジュリーニによる味わい深いサポートが加わってくる。
興味深くて、かつ、聴き応えの十分な、素敵な演奏であると思います。