モントゥー&ロンドン響によるベートーヴェンの交響曲第4番を聴いて

モントゥー&ロンドン響によるベートーヴェンの交響曲第4番(1961年録音)を聴いてみました。

1961年と言いますと、モントゥー(1875-1964)がロンドン響の首席指揮者に就任した年になります。このとき、86歳だったモントゥーは、なんと25年間という長期の契約を結びました。契約が完了するのは111歳のとき。
モントゥーは、晩年になっても若々しさを失わない生気に溢れた演奏を繰り広げてくれていました。とても率直な音楽表現を採っていて、音楽から瑞々しさが失われることはなかった。そのようなことから、「万年青年」と呼ぶに相応しい指揮者であると考えています。もともとがユーモア精神の豊かな人柄だったようですが、111歳までの首席指揮者という契約も、モントゥーの老いを知らない演奏ぶりからすると、本人も、そしてロンドン響の楽団関係者も、多少は本気だった部分もあったのではなかろうか。そんなふうに思わせくれるところが、モントゥーの音楽にはあるように思います。

さて、ここでのベートーヴェンの演奏についてでありますが、そのような「万年青年」としてモントゥーらしさの現れている演奏となっています。
まずもって、明朗かつ克明な演奏であります。粒立ちが鮮やかで、輪郭線がクッキリとしている。
そのうえで、誠に若々しい演奏ぶりが示されています。生命力豊かで、前進力の強い演奏となっている。逞しくて、輝かしい。しなやかで、瑞々しくもある。伸びやかで、歌心に溢れていて、清々しくて、躍動感に満ちている。更に言えば、太陽が燦々と降り注ぐような明るさが感じられもする。
と言いつつも、テンポは決して速いという訳ではありません。勢いで押してゆくような演奏ぶりでもない。低音に重きを置いていているために、安定感は抜群。第1楽章などはむしろ、どっしりと構えながら歩みを進めているような趣きがあります。それでいて、音楽が内蔵しているエネルギーや、推進力やは、とても大きい。全楽章を通じて、音楽が逞しく前進している。
そんなこんなもあり、ただ単に元気がよくて鮮明な音楽となっているだけではなく、コクの深さが感じられます。音楽全体が、充実感で満たされています。弾き飛ばすようなことは微塵も感じられず、じっくりと親しみを持って語りかけてくるような音楽となっているとも言えそう。音楽全体が暖かみを帯びている。エレガントでもある。
そのようなアプローチが、この作品にはとても好ましいように思えます。力感が充分であり、かつ、気品があって凛とした佇まいが示されている演奏ぶりが、この作品の性格にはピッタリ。

聴いていて、元気の貰えるような演奏。そして、なんとも見事で、誠に魅力的な演奏であります。