ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンによるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(1981年録音)を聴いてみました。
これは、ブロムシュテット(1927-)とSKDのコンビが、ドイツシャルプラッテンに完成したベートーヴェンの交響曲全集に続いて制作が開始されたシューベルトの交響曲全集の中の1枚。ブロムシュテットは50代の半ばに差し掛かろうとしていて、日本での注目度が急上昇していた時期の記録となります。
ブロムシュテットの演奏の特色は、誠実で清潔感に溢れた音楽づくりをベースにしながら、端正で格調の高い演奏ぶりを示してくれるところにあると言えましょうが、この演奏もまた、そのようなブロムシュテットの美質を存分に味わうことのできる素敵なものとなっています。
演奏全体がキリッとしていて、ピュアでノーブルな美しさに満ちています。そう、とても清澄な演奏となっている。それでいて、躍動感も充分。そして、逞しくもある。
シューベルトならではの抒情的な性格と、この作品に相応しい気宇の大きさとが、理想的な形で両立している。そんなふうに言いたくなる演奏であります。
そう、大言壮語するような素振りは微塵も見られずに、自然体が貫かれている演奏が繰り広げられていつつも、充実度は頗る高く、壮麗な音楽が鳴り響いている。そんなこんなのうえで、音楽の佇まいが実に美しいところが、なんとも尊い。気高さのようなものさえ感じられる演奏となっている。そこには、SKDならではの無垢な美しさを湛えている響きも、大きく貢献していると言えよう。
この作品の魅力を、背伸びすることなくありのままの姿で提示してくれている演奏と言えましょう。しかも、ここでの作品の魅力の描かれ方は、とてもクッキリとしたものとなっている。
いやはや、実に魅力的な演奏であります。