ネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響によるシベリウスの交響曲第5番を聴いて

ネーメ・ヤルヴィ&エーテボリ響によるBISレーベルへのシベリウス交響曲全集から第5番(1982年録音)を聴いてみました。

この全集は、これまでに聴いてきたシベリウスの交響曲全集のなかで、マイベストの一組になります。ドイツ・グラモフォンへの再録音よりもこちらの全集のほうに、勢いや、骨太感や、瑞々しさや、コクの深さや、といったものが、より強く感じられるのであります。
このCDを購入したのは、今から29年前の平成5年7月31日のこと。ここに収められている演奏に驚嘆しながら、全7曲を聴き進んでいったものでした。
どの曲も生命力溢れる演奏となっている。息遣いがとても自然でしなやかでもある。壮麗であるとともに詩情に溢れてもいる。しかも、作品ごとに出来栄えのバラつきが無いのがまた、全集としての価値のようなものを高めてくれている。

さて、そのような全集の中から第5番を聴き直してみたのですが、やはり、その素晴らしさに感心させられました。
誠に骨太な演奏であります。迷いが微塵も感じられず、自らを信じて、ひたすらに作品の核心へと切り込んでゆこう、といったような感慨が感じられる。そこからは、心からの共感を抱きながら作品に接してゆこうという、演奏者の心情が伝わってくる。
奏でられている音楽は、雄大そのものであります。しかも、かなり熱い。燦然たる輝きが感じられもする。そして、作品の隅々にまで血が通っている。雄弁でいて、自然な音楽の流れが、ここにはある。
更に言えば、何から何までが実に克明。輪郭線がクッキリとしていて、とても明快な演奏となっています。そう、クリアでありながら、ホットな音楽が奏で上げられているのであります。
全編を通じて、誇張は一切なく、誠実かつ克明な演奏ぶりでありつつも、充分にエネルギッシュで、雄大な演奏。逞しくて力強くありつつも、抒情味に溢れてもいる。最終楽章の最後の部分では、たっぷりと音を響かせながら、昂揚感たっぷりに壮大な音楽世界を築き上げてくれている。

ここに広がっているのは、寒々とした大地ではなく、肥沃な大地であると言えましょう。第5番は、シベリウスの全7曲の交響曲の中でも、最も骨太な逞しさの感じられる作品だと言えそうなだけに、このコンビによる演奏の魅力を存分に味わうことができるように思えます。
いやはや、惚れ惚れするほどに見事な演奏であります。