タローによるラヴェルのピアノ独奏曲全集から≪クープランの墓≫と≪夜のガスパール≫を聴いて
来月、来日するタロー。私は、京響とのラヴェルのピアノ協奏曲と、ドビュッシーとラヴェルにグリーグも織り交ぜてのピアノリサイタルと、2つの公演を聴きに行くことにしています。
そこで、今回は、タローによる音盤を紹介しようと思います。聴きましたのは、ラヴェルのピアノ独奏曲全集から≪クープランの墓≫と≪夜のガスパール≫の2曲(2003年録音)。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
タローは、1968年にパリに生まれたフランスのピアニスト。今はちょうど、50代の半ばに差し掛かっていますが、このラヴェル集は35歳のときの演奏が刻まれていることになります。
エッジが立っていて、輪郭がクッキリとしていて、立体的な音楽づくりが為されている演奏。しかも、リズミカルで、鮮やかな色彩感を備えている演奏となっています。
全編を通じて、贅肉の付いていないスリムな音楽が鳴り響いています。と言いつつも、音楽が痩せすぎてしまうようなことはなく、適度なふくよかさが感じられる。
清潔感がありながら、妖艶でもある。しっとりとした雰囲気を持ちつつ、躍動感があり煌びやかであり、ダイナミックでもある。≪夜のガスパール≫の終曲の「スカルボ」などでは、誠に力強くて鮮烈な演奏が展開されている。
そのうえで、音は透き通るように美しい。冴え冴えとしていて、クールな色合いを湛えています。それでいて、暖かみが感じられもする。
このように、相反するような性格が矛盾することなく並立しているところに、タローの感受性の鋭敏さと、音楽センスの高さが感じられます。
多角的に音楽を照らしながらの、多彩な魅力を備えている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。