ヤンセン&パーヴォ・ヤルヴィ&ロンドン響によるブリテンのヴァイオリン協奏曲を聴いて

2023年5月18日

ヤンセン&パーヴォ・ヤルヴィ&ロンドン響によるブリテンのヴァイオリン協奏曲(2009年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ヤンセンによるヴァイオリンは、繊細にして奔放なもの。或いは、清冽で抒情性に溢れていて、かつ、情熱的でもある。
基本的には、音楽づくりがシャープであり、曲想に鋭敏に反応してゆく、といったタイプだと言えましょう。そこに、清冽なリリシズムが加えられてゆく。それでいて、表現意欲が旺盛と言いますか、闊達な音楽が繰り広げられているのであります。しかも、それらが空中分解するようなことはない。
ここでのブリテンの協奏曲では、そのようなヤンセンの鋭利な音楽づくりが前面に押し出されたものとなっています。そして、音楽の佇まいがキリっとしている。それでいて、躍動感にも不足はなく、生命力に溢れている。決して力づくではないものの、体当り的な奔放さが感じられもする。しかも、テクニックが冴え渡っていて、巧緻な演奏となっている。
ちょっと言い方を変えれば、献身的な演奏ぶりだとも言えそう。そのようなこともあって、音楽の息遣いが誠に豊かであって、かつ、端正な佇まいをしている。
パーヴォによる指揮も、これまた巧緻でありながら、覇気に満ちたものとなっています。そして、鋭敏な演奏ぶりとなってもいる。

総じて、研ぎ澄まされた感性に貫かれた、「今どき」な演奏だと言えましょう。そのうえで、細身になり過ぎない、豊かな音楽が鳴り響いている。それゆえに、知情のバランスに優れている演奏だとも言えそう。
なんとも素敵な演奏であります。