シフ&ハイティンク&シュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を聴いて

シフ&ハイティンク&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集から第4番(1996年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

繊細にして、清冽な演奏であります。それによって描き出されている音楽世界は、この作品にピッタリ。
しかも、実に美しいが繰り広げられています。そのことは、響きにおいても、音楽が示している佇まいにおいても、当てはまる。(とりわけ、SKDの清らかな美音は、大いなる魅力となっている。)
と言いつつも、ベートーヴェンならではの逞しさや、意志の強さにも不足はありません。響きには、一定の厚みがある。それでいて、過度に分厚くもならない。力づくであったり、猛々しかったり、といったこともない。更に言えば、居丈高であったり、堅苦しかったり、といったこともない。余裕たっぷりに、充実感いっぱいな音楽を響き渡らせている、といった塩梅。
そのうえで、ピアノも指揮も、とても真摯な演奏ぶりが示されています。そして、夾雑物が一切含まれていないような純粋な音楽が奏で上げられている。息遣いは頗る自然で、かつ、感情の表出が細やかでもある。

全編を通じて、自然体でありながら、実に立派な演奏が繰り広げられている。そして、頗るチャーミングでもある。
シフとハイティンクとSKDの美質が十全に発揮されていて、かつ、作品の魅力を存分に堪能することのできる、なんとも素敵な演奏であります。