プレトニョフ&ロシア・ナショナル管によるスクリャービンの交響曲第3番≪神聖な詩≫を聴いて
プレトニョフ&ロシア・ナショナル管によるスクリャービンの交響曲第3番≪神聖な詩≫(1998年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
明快な演奏となっています。筋肉質な演奏ぶりだとも言えましょう。スクリャービンならではの、むせかえるような艶美な音楽世界が広がる演奏とは、一線を画したものとなっています。
音楽に、スッキリとした、均整の取れた佇まいを与えながら、演奏は繰り広げられてゆく。音楽がうねりながら流れているというよりも、見通しがクッキリとしている。端正であり、隈取が鮮やかで、分離の良い演奏であるとも言えそう。
そのことによって、作品の「実像」のようなものが、鮮やかに描き出されてくる。
しかも、磨き上げが丹念で、粗さがない演奏ぶりでありつつも、適度にドラマティックであり、躍動感や力感にも不足はない。
そのうえで、この作品が持っている華麗な音楽世界も、必要十分に示されている。それはすなわち、スクリャービンを聴く歓びに繋がるものだと言えましょう。
麻薬的な魅力というよりも、純音楽的な精妙さを備えているスクリャービン演奏。しかも、シッカリとした手応えが伝わってくる、立派な演奏となっている。
ユニークな魅力を湛えている、素敵なスクリャービン演奏であります。