ルイージ&ウィーン響によるシューマンの交響曲第2番を聴いて

ルイージ&ウィーン響によるシューマンの交響曲第2番(2008年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

2005年から2013年までウィーン響のシェフを務めていたルイージは、2006年~08年にかけて同オケとシューマンの交響曲全集を全曲ライヴ録音で制作していますが、この2番は、その完結編になります。

ルイージらしい、清潔感に富んだ演奏となっています。とても端正でもある。
それでいて、音楽はシッカリと躍動していて、生命力に溢れたものとなっている。必要十分な輝かしさを秘めてもいる。この辺りは、ライヴであることも関係しているのかもしれません。
シューマンの交響曲の中でも、この第2番は律動感の高い作品だと言えそうですので、このような演奏ぶりは誠に似つかわしい。特に、第1楽章の展開部において、そのことを強く感じた次第であります。更には、第2楽章は無窮動に動き回る曲想を持っていますが、そこでの躍動感も、スッキリとした形で描き上げられている。とりわけ、この楽章での最後の部分での追い込みには、目を瞠るものがあります。
しかも、力強くて、逞しさを滲ませた演奏が展開されている。ルイージによる演奏では、2014年1月のN響定期でのオルフの≪カルミナ・ブラーナ≫(このときは、≪カトゥリ・カルミナ≫も一緒に演奏されました)での大熱演が印象的であります。このときの終演後の聴衆の熱狂は、凄まじいものがありました。私も、その中に身を置いていることへの幸福感(私が聴いたのは、2回公演のうちの初日でありました)を、思う存分に噛みしめていたものでした。そのときの演奏ぶりに比較すると、ここでのシューマンはさすがにもう少し理性的だと言うべきかもしれませんが、ルイージの体の中に流れている情熱的な血潮が(ルイージは、意識されることは少ないかもしれませんがイタリア人であります)、シッカリと認識できる演奏になっていると言いたい。
その一方で、緩徐楽章となる第3楽章では、粛然とした歩みの中に、厳かな歌心が籠められた演奏が繰り広げられている。

頗る多感であり、夢想的であり、思索的であり、ある時には憑依型の芸術家としての顔を見せることが多いと言えそうなシューマン。そのようなシューマンの作品の中でも、この交響曲は、とりわけ多様な性格を秘めていると思えます。ここでは、そういった作品像を、狂気を秘めた形にまではならない範囲で、折り目正しく奏で上げていった演奏が繰り広げられている。そんなふうに言いたくなります。
ルイージの音楽性の確かさを痛感することのできる、素敵な、そして、聴き応え十分な演奏であると言えましょう。