マケラ&パリ管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫を聴いて
マケラ&パリ管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫(2023年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
マケラは、1996年の1月にフィンランドで生まれた指揮者。まだ28歳になったばかりでありますが、2021年秋にはパリ管の音楽監督に就任。更には、2027年にはコンセルトヘボウ管の首席指揮者に就任することが発表されており、それに加えて、今月には、2027年にシカゴ響の音楽監督に就くことが発表されました。となりますと、この若さにして、世界の楽壇を代表する3つの超一流のオケのシェフを兼任することになる。なんとも凄まじい勢いであります。
当盤は、昨年の秋に録音された最新盤になります。
2021年にオスロ・フィルと録音したシベリウスの交響曲全集で、DECCAレーベルにデビューしたマケラ。
そのシベリウスでは、どっしりと構えた音楽づくりをベースにしながら、瑞々しい感性に裏打ちされた清々しい演奏を展開していた、といった印象を持ったものでした。音楽の芯がシッカリとしていて、逞しさを備えている。感興が豊かでもある。しかも、音楽がダブつくようなことはなく、スッキリとした佇まいを示している。フレッシュな感覚に溢れていて、身のこなしがしなやかでもあった。
その後、同じくDECCAレーベルに、パリ管を指揮して≪春の祭典≫と≪火の鳥≫も録音してくれました。
しかしながら、こちらのほうは、今一つ演奏に鮮やかさが感じられなかった。生気が乏しく、躍動感が不足していたようにも感じられた。そのような印象となったことが、意外に思えたものでした。
さて、今回のパリ管との≪ペトルーシュカ≫はどうなのだろうか。期待と不安とが入り混じりながらの鑑賞でありました。
結論から言えば、大いに満足でありました。
その最大の要因は、パリ管のカラフルな響きにあったように思えます。2011年のNHK音楽祭で聴いた、パーヴォ・ヤルヴィ&パリ管による≪ペトルーシュカ≫もそうでありました。響きが煌びやかで、NHKホールが光り輝いていたような錯覚を覚えた、あのときの≪ペトルーシュカ≫。その記憶が蘇ってくるような音がしている。
≪ペトルーシュカ≫は、総じて、重心の軽い音楽だと言えましょう。そのような性格を十分に満たしている、軽妙な音楽が鳴り響いているのであります。軽快にして、精妙な音楽が響き渡っている。生彩感も充分。
そのうえで、マケラの音楽づくりからは、敏捷性の高さが感じられた。そのことが、この演奏が宿していた「軽快さ」を生んでいたと言えましょう。
それでいて、シベリウスでの演奏と同様に、音楽の造りはドッシリとしている。そう、お祭り騒ぎになるようなことはないのであります。NHK音楽祭で聴いたパーヴォとの演奏ほどの切れ味の鋭さが感じられることもなかった。その代わりに、メロウな音楽が響き渡っていた。しかも、ペトルーシュカという操り人形の「悲哀」も、十分に滲み出てくる音楽となっていた。
マケラとパリ管の、それぞれの美質が存分に発揮されている≪ペトルーシュカ≫。
このような演奏に接すると、このコンビの今後が、ますます楽しみになります。