アバド&ロンドン響によるプロコフィエフの≪ロメオとジュリエット≫ハイライツを聴いて

アバド&ロンドン響によるプロコフィエフの≪ロメオとジュリエット≫ハイライツ(1966年録音)を聴いてみました。
ここでは、9つのナンバーが抜粋されており、演奏時間は28分少々。

当盤を録音したとき、アバドは33歳。1965年のザルツブルク音楽祭で、マーラーの≪復活≫を指揮してセンセーショナルな成功を収めた翌年の録音になります。そして、DECCAに録音した2枚目のアルバムとなっています。ちなみに、1枚目は、ウィーン・フィルとのベートーヴェンの交響曲第7番と≪プロメテウスの創造物≫序曲でありました。
なお、アバドは、プロコフィエフの≪ロメオとジュリエット≫の抜粋版を、1996年にベルリン・フィルとも録音しています。そちらでは20のナンバーが選曲されており、演奏時間は68分ほど。
DECCAへの最初期の録音として採り上げたこと、更には、再録音にも取り組んでいることから、この作品に対して、アバドは深い愛情を寄せていたことが窺えます。

さて、ここでの演奏から感じられたことについて。
キビキビとした音楽運びをベースにしながらの、颯爽とした演奏であります。力感に溢れ、覇気に満ちている。そして、精彩に富んでいる。「斬り合い」や、「タイボルトの死」の前半部分に代表される急速なナンバーでは、凄まじいまでの疾駆感が備わっている。
総じて、切れ味が鋭くて、鮮烈な演奏ぶりが示されています。そのために、痛快で、スリリングな演奏となっている。ダイナミックで、エネルギッシュな音楽世界が広がっている。音楽全体が躍動している。しなやかでもある。
そのうえで、抒情的な場面では、音楽をたっぷりと歌いこんでいて、ロマンティックな趣きにも不足はありません。「オーバード」などでの可憐な味わいも、誠にチャーミング。
全体的に起伏に富んでいる演奏となっていて、バレエ音楽というドラマ性を持っている音楽にピッタリ。しかも、機敏で、運動性の強い音楽づくりが為されているところも、バレエ音楽に相応しいと言えましょう。

アバドの俊英ぶりが遺憾なく発揮されている、才気に満ちていて生気に富んている、聴き応え十分な演奏であります。
これは、アバドが、その最初期の録音から見事な手腕を振るっていたことを聞き取ることができる、注目すべき音盤であると思います。