コリン・デイヴィス&バイエルン放送響によるエルガーの≪エニグマ≫を聴いて
コリン・デイヴィス&バイエルン放送響によるエルガーの≪エニグマ変奏曲≫(1983年ライヴ)を聴いてみました。
C・デイヴィスは、若手の頃から中堅と言えるような時期まで(それは概ね1970年代辺りまで)は、しばしば「熱血漢」と呼ばれていました。端正でありつつも、熱い血潮を滾らせるような情熱的な演奏を繰り広げる傾向が強かった。ベルリオーズの演奏で高い評価を受けていたのも、この辺りから来ていたように思えるのであります。
そこへいきますと、1983年のライヴ録音となるこの≪エニグマ≫は、全く大言壮語をしておらずに、概して泰然自若とした表情をしていて、必要以上に熱くなっていない演奏だと言えそう。
全体を通じて、風格豊かな演奏となっています。威風堂々としていて、ノビルメンテな雰囲気に溢れている。
そのうえで、暖かみのある、慈しみ深い演奏ぶりが示されている。しなやかで、伸びやかでもある。基本的にはしっとりとした質感をしていつつも、適度に艶やかでもある。大袈裟にならない範囲で、充分なる力感を湛えてもいる。そして、とても格調高い。更に言えば、拡がり感の大きな演奏となってもいる。
いやはや、なんとも情趣豊かで、奥行き感のようなものが備わっている演奏。そんなふうに言えるように思えます。
素敵で立派な演奏であります。