ボールト&ロンドン・フィルによるホルストの≪惑星≫を聴いて
ボールト&ロンドン・フィルによるホルストの≪惑星≫(1978年録音)を聴いてみました。
ボールト(1899-1983)は、≪惑星≫の初演者。生涯に、同曲を5回セッション録音していますが、当盤は、その最後のものになります。録音当時、ボールトは89歳でありました。
さて、この演奏を聴いての印象について。
なんとも風格豊かな演奏であります。じっくりと音楽を鳴り響かせながら、コクのある演奏が繰り広げられている。
と言いつつも、この演奏は、決して「枯れた」ものなどではありません。むしろ、若々しくて、覇気が漲っている。音楽全体が活力豊かにと律動していて、逞しい音楽が展開されている。音楽が、随所で生き生きと飛び跳ねています。
しかも、息遣いは極めて自然。テンポはかなり揺れているのですが、それが全く恣意的なものとなっていない。それはまさしく、作品と共に呼吸をし、その結果としてテンポが伸び縮みをしているということに他ならないと言えましょう。この点については、演奏行為の基本だと言えるのでありましょうが、これほどまでに見事に(しかも、自然に)為されるのは、驚異的なことだと思えます。
そのうえで、「火星」「木星」「天王星」では、どこにも誇張はないのに、気宇の大きな演奏となっている。ダイナミックでありつつも、音楽が重くなるようなことは微塵もなく、流れが滑らかで、かつ、伸びやかでもある。適度に煌びやかでもある。「金星」「土星」「海王星」では、これらのナンバーに特有の、落ち着いていて、平静な雰囲気に包まれているが、決して沈み込んだ音楽とはなっておらず、暖かみがあって、底辺に広がっている活力のようなものを感じ取ることができる。それは特に、「土星」の中間部において顕著。そして、「水星」は、律動感に満ちていて、音楽が弾け飛んでいる。
さすがの、この作品の魅力を満喫することのできる演奏となっています。更に言えば、聴後の充実感の頗る大きい。
いやはや、なんとも素晴らしい演奏であります。