C・デイヴィス&ボストン響によるシベリウスの交響曲第1番を聴いて

コリン・デイヴィス&ボストン響によるシベリウスの交響曲全集から第1番(1976年録音)を聴いてみました。

C・デイヴィスは、シベリウスの交響曲全集を3つ完成させています。ボストン響との全集は、その最初のもの。その後、1990年代にロンドン響を指揮してセッション録音で制作し、更には、2000年代にロンドン響とライヴ録音でも全集を完成させました。
個人的には、最も惹かれるのは、2つ目の全集、ロンドン響とRCAレーベルにセッション録音したものであります。
2回目の全集、それは、全編を通じて音楽がうねりにうねっているものとなっている。燃え滾った音楽となっている。しかも、とても凝縮度が高い。音楽が熱い塊となって、迫りくるような力を持っている。気力が充実し切っている演奏が、終始鳴り響いているのです。聴いていて、興奮してくる音楽となっているのです。そんなこんなによって、心を大きく揺さぶられる演奏となっているのです。
そこへいきますと、このボストン響との最初の全集での演奏は、総じて、より穏当なものであるように思います。聴いていて、平静な気持ちで作品と向き合うことができる。それは、この第1番においても然り。
と言いつつも、ここでの演奏も、聴き応え十分な、素晴らしいものとなっています。

全編を通じて、とても逞しい演奏が繰り広げられている。しかも、極めて誠実で、真摯でもある。更に言えば、毅然としていて紳士的でもある。造形的な美しさが感じられる。
総じて、輪郭線がはっきりとしていて、曖昧模糊としていない。そう、とっても明瞭な演奏となっているのです。そのような中から、ムクムクと情熱が湧き立ってくるような演奏が展開されている。
2日目の全集でも、知的な側面が感じられるのですが、それよりも情熱の方が優っていたように思えます。そこへいきますと、ここでの演奏は、知情のバランスの取れているものとなっている。そのことによって、作品の魅力を、等身大に味わうことができる。しかも、頗る誠実な姿勢で奏で上げられてゆく演奏を通じて。
そのうえで、充分に逞しい生命力を宿している演奏となっている。推進力を持って、音楽が奏で上げられている。熱い血潮が感じられもする。

充実感いっぱいの、素敵な演奏であると思います。