デュトワ&モントリオール響によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲を聴いて

デュトワ&モントリオール響によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲版(1984年録音)を聴いてみました。

デュトワならではの美麗な演奏が繰り広げられています。なんとも美しい≪火の鳥≫。艶やかでもある。もっと言えば、頗るエレガント。そう、実に薫り高い≪火の鳥≫となっている。
そのような演奏ぶりに対して、「デュトワならではのマジック」が掛けられている演奏だと言いたくなります。
そのうえで、輝かしいまでの光沢が放たれていて、煌びやか。色彩鮮やかな演奏となっている。しかも、運動性にも不足はない。生気に満ちていて、音楽がキビキビと動いています。更に言えば、決して暴力的ではないのにパンチ力は充分で、エネルギッシュでもある。全編を通じて、アグレッシブで、ドラマティックで、バイタリティに溢れた演奏が繰り広げられているのであります。そのような様が、ストラヴィンスキーのバレエ音楽の世界には誠に相応しい。
そんなこんなのうえで、最初に戻りますが、途轍もなく美しいのであります。磨き上げが頗る丁寧でもある。その結果として、実に精妙な音楽が鳴り響くこととなっている。

デュトワの、オケを存分にドライブしながら丹念に磨き上げてゆく確かな手腕と、豊かな音楽センスが光る、卓越した演奏。そのうえで、逞しい生命力にも溢れていて、運動性の豊かな演奏となっている。
デュトワの魅力と、≪火の鳥≫の魅力の双方を存分に味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。

来月には大阪フィルに来演し、≪火の鳥≫の全曲版を演奏することになっているデュトワ。デュトワは、相手がどのオケであろうとも、同様の「マジック」を掛けることできると、私は看做しています。
大阪フィルとの実演でも、きっと、この音盤から受けた印象と似通った≪火の鳥≫に触れることができるのでありましょう。実に楽しみであります。