フリッチャイ&RIAS響による≪春の祭典≫を聴いて

フリッチャイ&RIAS響によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(1954年録音)を聴いてみました。

鋭利で、明晰な演奏となっています。とても巧緻でもある。
虚飾を排したクリアな演奏ぶりが示されています。そして、実に客観的。この作品の生命力を的確に描き上げてくれている。1950年代に、この作品に対してこのようなアプローチができているというのは、驚異的なことだと言えるのではないでしょうか。
そのうえで、とても力感に富んでいて、生き生きとしていて、逞しい音楽が鳴り響いている。と言いましても、決して野蛮な演奏になっている訳ではありません。純音楽的な力感が与えられている、といった感じ。音楽の佇まいがキリっとしています。
そして、動と静のコントラストが明瞭。静の部分では、豊かな抒情性が感じられもする。そう、客観的なアプローチであるように思えながらも、感情豊かな音楽づくりが為されているのです。言い方を変えれば、人間味の溢れる暖かみのある音楽づくりが為されているように思える。すなわち、機械的な演奏となっている訳ではない。極めて巧緻でありつつも、メカニカルな面を磨き上げてゆくだけの演奏ではないように感じられるのです。この作品において、そのような思いを抱かせるというのもまた、驚異的であると言えましょう。
そんなこんなのうえで、総じて頗る鮮烈な演奏となっている。

フリッチャイの音楽性の豊かさが、鮮やかな形で示されている演奏。
この演奏、話題に上ることが少ないように思えますが、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい素晴らしい演奏であります。
尚、モノラル録音ながら、音は充分に鮮明。この演奏を楽しむにあたって、なんら支障のない音質であるのも、実に嬉しい。