バーンスタイン&バイエルン放送響によるハイドンの≪戦時のミサ曲≫を聴いて
バーンスタイン&バイエルン放送響によるハイドンの≪戦時のミサ曲≫(1984年録音)を聴いてみました。
戦時のミサなどという物騒な呼び名が付けられていますが、その由来はと言いますと、このミサ曲が作曲された1796年に、フランスのナポレオン軍がオーストリアへ侵攻していたという情況の反映であって、作品自体には特に戦争を暗示する要素がある訳ではありません。
なお、第6曲の「アニュス・デイ」でティンパニが活躍するため、ドイツ語圏では≪パウケン・ミサ≫、つまり≪ティンパニ・ミサ≫の通称で、英語圏では≪ドラム・ロール・ミサ≫、つまり≪太鼓連打ミサ≫の通称で、親しまれています。
さて、ここでの演奏はと言いますと、暖かみがあり、かつ、逞しさを備えたものとなっています。
あまり開放的にならず、情熱をむき出しにするようなこともない、ここでのバーンスタイン。そこには、バイエルン放送響の体質も関係しているように思えます。機能性の高さを裏付けとしながら、ニュートラルな響きでもって、スッキリと演奏を展開することに長けているという、放送局所属のオーケストラによく見受けられる体質が、ここでも窺えるのであります。
そのようなこともあり、とても端正な演奏となっています。そして、親しみやすい音楽となっている。キリッとしていつつも、まろやかな膨らみのようなものが感じられもする。この辺りは、バーンスタインならではだと言えるのではないでしょうか。
そのうえで、必要十分な気宇の大きさが備わっている。適度に勇壮でもある。そう、明朗にして、壮健な音楽世界が広がっている。
人懐っこくて、生気を帯びている、ハイドンの音楽に似つかわしい演奏ぶり。過度に厳かな雰囲気を滲みだしていたり、かしこまっていたりするようなことはないながらも、端然とした音楽世界が広がっているところが、ミサ曲での演奏に相応しくもある。
そのような音楽づくりを通じて、作品の音楽世界にス~っと入り込むことのできる、素敵な演奏であります。