クーベリック&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪ハフナー・セレナード≫を聴いて
クーベリック&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪ハフナー・セレナード≫(1963年録音)を聴いてみました。
独奏ヴァイオリンは、このオケのコンサートマスターであるケッケルト。
クーベリックならではの、端正で、凛とした佇まいを示している演奏となっています。
全編を通じて、誠実さに溢れた演奏だと言えましょう。しかも、生き生きとしていて、弾力性を帯びた演奏となっている。キビキビとしていて、伸びやかで、晴れやかで、かつ、ふくよかでもある。そして、その先には、モーツァルトの音楽が持っている、とりわけ、セレナードという機会音楽が本来的に持っている飛翔感や愉悦感が、誇張された形ではなく、ごく自然な形で滲み出ている。そこにはまさに、作品が持つ生命力が、内側から自然に湧き出してくる、といった趣きがある。更に言えば、作品そのものが、自らの魅力を語りかけてくるような趣きが感じられもする。
そのうえで、十分に逞しくて、スケールの大きさが感じられる。響きや、音楽が示している佇まいは、充実感に満ちている。
いやはや、なんと奥行きの深い演奏なのでありましょうか。クーベリックの音楽性の豊かさや、人間性の高さが滲み出ているとも言いたい。
ケッケルトの独奏ヴァイオリンがまた、派手ではないのですが、充分に艶やかで、格調の高い美しさを湛えています。
親しみやすさの中にも、高潔さの漂う演奏。このようなタイプの演奏、私は大好きであります。しかも、作品の魅力を堪能することができる。
なんとも素敵な演奏であります。