ルドルフ・ゼルキン&オーマンディ&フィラデルフィア管によるメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を聴いて

ルドルフ・ゼルキン&オーマンディ&フィラデルフィア管によるメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番(1959年録音)を聴いてみました。

ここでのゼルキンによる演奏は、堅固にしてロマンティックなもの。華麗さを誇示するようなスタイルではありませんが、落ち着いた音楽づくりの中にも煌びやかさが感じられる演奏となっています。そして、端正で凛とした音楽づくりの中にも、情熱的な色合いを湛えている。とりわけ、第1楽章では疾駆感の強い音楽が奏で上げられている。また、最終楽章では頗る晴れやかな音楽が鳴り響くこととなっている。
ゼルキンならではの、やや硬質な響きで、粒の揃っている音を駆使しながらの演奏だと言えましょう。音に透明感があり、なおかつ、精妙な色合いを湛えてもいる。そのうえで、華美にならない範囲での色彩の鮮やかさが感じられる。そのようなこともあって、メンデルスゾーンの音楽が持っているロマンティシズムが巧まざる形で現れてくる演奏となっているのでしょう。ロマン派の音楽ならではの情熱も過不足なく備わっている。そのうえで、闊達さが感じられる。
更に言えば、メンデルスゾーンならではの可憐さが感じられもする。特に、第2楽章では、歌心に満ちていて、詩情豊かな音楽が紡ぎ上げられている。頗る優美でもある。
そのようなゼルキンをサポートするオーマンディがまた、精彩のある演奏を展開してくれていて、実に見事。

あまりメジャーだとは言えそうにない協奏曲でありますが、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏となっています。しかも、奥行き感のある音楽に触れることのできる演奏だとも言えそう。
なんとも素敵な演奏であります。