ヨッフム&ロンドン響によるエルガーの≪エニグマ変奏曲≫を聴いて

ヨッフム&ロンドン響によるエルガーの≪エニグマ変奏曲≫(1975年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ヨッフムと≪エニグマ変奏曲≫という、意外な組合せ。おそらくヨッフムにとって、唯一のエルガー作品の正規録音でありましょう。
録音されたのは、ヨッフムが73歳になる年。晩年と呼べる時期に差し掛かっての演奏と言えましょうが、とても壮健な演奏が繰り広げられています。生気に溢れていて、明朗で、快活な音楽が鳴り響いている。
と言いつつも、無為に騒ぎ立てるような演奏ぶりになっている訳ではありません。むしろ、どっしりと構えながらの演奏となっていて、誠に風格豊か。そして、凛としていて、背筋のピンと伸びた演奏が展開されている。しかも、誠実味や人情味に溢れている。随所で暖かみが感じられ、優しさが滲み出てきている。アンコールで採り上げられることもある「ニムロッド」などでは、慈愛に満ちた眼差しが感じられもする。
そのうえで、躍動感に不足はなく、活力に満ちた演奏となっているのであります。逞しい生命力に溢れている。
しかも、毅然としていて、格調高い。この点については、エルガーを演奏するにあたっては不可欠な要素だと言えましょうが、そのような性格がシッカリと刻まれている。

ヨッフムの、指揮者としての懐の深さや、音楽に対する責任感の大きさや、人間性の豊かさの詰まっている、聴き応え十分な、実に魅力的な演奏であります。