レヴァイン&フィラデルフィア管によるシューマンの交響曲第2番を聴いて

レヴァイン&フィラデルフィア管によるシューマンの交響曲全集から第2番(1977年1月10日 録音)を聴いてみました。
このコンビによるシューマンの交響曲全集の中で、最初に録音されたものになります。

音楽監督以外の指揮者との録音が極めて少なかったフィラデルフィア管が、レヴァインと録音した貴重な記録。このシューマン以外には、マーラーの交響曲第5,9,10番があるだけではないでしょうか。
(マーラー2曲のうち、第5番はシューマンの第2番がレコーディングされた直後の1977/1/17,18に録音され、第9番は1979年に、第10番は1978,80年に録音されています。)
また、レヴァインは、1990年前後にもDGレーベルにベルリン・フィルとシューマンの交響曲全集を完成させています。

さて、ここでの演奏でありますが、なんとも明朗なものとなっています。ネアカなシューマン演奏、だとも言えそう。
第2番は、シューマンが書き上げた4曲の交響曲の中で、最も晦渋な作品であると言えるのではないでしょうか。その理由は幾つかありましょうが、メロディにあまり親しみやすさが感じられないことが挙げられるように思えます。全体的に「ネクラ」な感じが否めず、内向的な性格が強いようにも思える(これは、多くのシューマン作品にも当てはまることでありましょう。もっとも、ネクラと言いましても、内に秘めた思いは、とても熱いものがあるのですが)。全体的に、曇りがちな空模様の音楽だとも言えそう。更には、音楽の構造が、やや絡み合っているようにも思える。
少なくとも私個人としましては、シューマンの交響曲の中では、なかなか馴染めない作品でありました。20代の頃までは、シューマンの交響曲を聴こうという思いが湧き上がっても第2番に手が伸びることは殆ど無く、他の3曲を好んで聴いていたものでした(今は、4曲とも同等の頻度で聴くようになっています)。
そのような第2番においても、ここでのレヴァインの旧盤は、実に明るい演奏となっている。そう、見通しスッキリで、陽光が降りそそいでいるかのような音楽が鳴り響いているのであります。明快にして、ドラマティックで、激情的な音楽になっているとも言えそう。例えば、第1楽章の再現部では、ティンパニの強打やホルンの強奏などによって、激流のごとき音楽が繰り広げられていて、なんともスリリングであります。
全体を通じて、内向的であるというよりも、実に開放的な音楽となっています。
(ここで思い出されるのは、バーンスタインが、シューマンの交響曲の中でも、第2番に特別な愛着を抱いていたということ。1990年に札幌で創設された国際教育音楽祭PMFで、バーンスタインがただ1回関わることができた1990年に採り上げた作品が、シューマンの交響曲第2番でありました。)
しかも、フィラデルフィア管の煌びやかな響きが、ここでの「明るさ」や「開放感」を一層際立たせてくれることとなっている。

実に個性的な、そして、素敵なシューマン演奏であると思います。