ワルター&ニューヨーク・フィルによる≪ジュピター≫を聴いて

2022年3月9日

ブログへの、本格的な投稿の第一弾。
何を採り上げるかは、ブログを始めると決意したその時から、心に決めておりました。それが、こちら。ワルター&ニューヨーク・フィル(NYP)によるモーツァルトの≪ジュピター≫(1956年録音)であります。
ちなみに、1956年と言いますと、モーツァルトの生誕200年の記念イヤーになりますね。

この作品は、ジュピターの曲名に相応しく(このニックネームは、後世の人によって与えられています)、気宇が大きくて、祝祭的な性格を備えていると言えましょう。私自身、ブログの立ち上げを祝す意味を込めて選曲しました。
その≪ジュピター≫の音盤の中でも、このワルター&NYP盤は、ベーム&ベルリン・フィル盤(1961年録音)とともに、私の中でのTop2の演奏となっています。

ワルターによる音盤と言えば、多くの音楽愛好家の念頭には、まずもって、コロンビア響との一連のCBSへのステレオ録音(一部、NYPを指揮したものが含まれています)が浮かぶのではないでしょうか。そこでの演奏は、慈愛に満ちていて、微笑みを絶やさないものとなっていて、ある種、穏健な性格を持っているものが多いと言えそう。そのことが、ワルターという指揮者のイメージに直結しているとも思えます。
ところが、その僅か数年前にNYPと行った一連の録音には、とても豊麗で、輝かしいものが多いように捉えています。覇気があって、ホットで、エキサイティングで、スリリングな演奏が多い。そのうえで、よく歌い、暖かな人間性が滲み出ているものが多い。
この≪ジュピター≫もまた、そのようなNYP時代のワルターの特徴がよく出ていると言えましょう。覇気に満ちた、豊麗な演奏となっています。そして、ジュピターという副題を持つこの作品に相応しい、威容を誇る音楽が鳴り響いています。最終楽章の気宇壮大な雰囲気も十二分。
そのうえで、実に端正な演奏となっている。キリリと引き締まったフォルムが誠に美しい。歌心に満ちていて、伸びやかで、晴れやかである。強引であったり、威圧的であったり、といったところは一切なく、適度な熱狂とともに優美さが備わってもいる。

なんとも立派な、そして、魅力的な演奏。
私にとっての宝物の1枚であります。