ライナー&シカゴ響による≪展覧会の絵≫を聴いて
ライナー&シカゴ響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1957年録音)を聴いてみました。
ライナー(1888-1963)による演奏の特徴、それは、明晰で、キレッキレな演奏ぶりにあると言えましょう。そこから生まれる音楽は、強靭にして剛毅なもの。そして、毅然とした佇まいを示してくれることが多い。何振り構わず突き進んでゆくような鮮烈さを持っている。それでいて、素っ気ない演奏となっている訳ではなく、そこここに生き生きとした表情を見出すことができる。
緻密な音楽づくりをベースにしながら、ダイナミックでスリリングで、しかも、ロマンティックでめくるめくような音楽世界を出現させてくれる指揮者。そんなふうに言えるように思えます。
さて、ここでの≪展覧会の絵≫についてであります。
なるほど、ライナーらしい剛毅で強靭な演奏であります。それでいて、カミソリのような鋭さが備わっているようには思えない。どちらかと言えば、ふくよかさのようなものが感じられる。鋭利でキレッキレというよりは、厚みを伴ったまろやかさが感じられる。
そのうえで、ライナーならではの、曖昧さのない明快な演奏が繰り広げられている。目鼻立ちがクッキリとしていて、緻密にして明晰な音楽となっている。決して力づくではないものの、充分なる力強さが備わっている。そんなこんなによって、痛快な音楽となっている。
いつもながらのライナーとは少し趣きを異にしながらも、ライナーはやはりライナー、と思わせるような演奏が繰り広げられている、ここでの≪展覧会の絵≫。
なかなかに興味深い演奏であると思います。