セル&クリーヴランド管によるスメタナの≪わが生涯より≫を聴いて
セル編曲によるスメタナの弦楽四重奏曲第1番≪わが生涯より≫の管弦楽曲版。セル&クリーヴランド管による演奏(1949年 録音)で聴いてみました。
この編曲、弦楽合奏によるものではなく、フルオーケストラで奏で上げられる音楽となっています。ティンパニやシンバルや小太鼓、はたまたドラなども含めた打楽器群、更にはハープまでも取り入れての堂々たる編曲となっている。
例えば、第2楽章冒頭の2音、「ズン、シャ~~ン」でのズンにはティンパニを、シャ~~ンにはシンバルを打ち鳴らすというサービスぶり。なんとも痛快な編曲であります。セルのオーケストレーション能力の凄まじさが身に染みてくる。これは、ラヴェルによる≪展覧会の絵≫の編曲に匹敵する偉業だと称賛したくなります。
しかも、決してお祭り騒ぎになったり、音楽が散漫になったりせずに、凝縮度の高い音楽が繰り広げられてゆくところが、いかにもセルらしいところ。総じて、キリっと引き締まっている。そのような中から、薫り立つようなロマンティシズムが漂っても来る。この辺りは、例えば、第1楽章での第2主題に顕著に現れていると言いたい。
演奏がまた、共感に満ちた素晴らしいものとなっている。決して羽目を外さずに、それでいてセル自身が思いっ切り楽しんでいる様が伺えます。セルならではの、キチッとカチッとした演奏スタイルでありつつ、キビキビとしていて、生命力に溢れてもいる音楽となっている。第3楽章では、切々とした歌心が示されている。最終楽章などでは、音楽が嬉々としながら躍動している。
そのうえで、この作品が持っている民族性の豊かさに加えて、気品高い音楽が鳴り響いている。そんなこんなを含めて、編曲についても演奏内容についても、音楽センスの高さを、そこここから聞き取ることができる。
ゲテモノなどと言うなかれ。これは一聴の価値のある、素晴らしい音楽であると思います。