マゼール&ベルリン・フィルによるシューベルトの交響曲第3番を聴いて

マゼール&ベルリン・フィルによるシューベルトの交響曲第3番(1962年録音)を聴いてみました。

1960年代の初頭、30代に入ったばかりのマゼールは、DGレーベルにベルリン・フィルを振って数多くの音盤を制作していました。その多くは、才気が漲っていて、覇気に満ちている、充実したものとなっている。このシューベルトもまた、その例の一つだと言えましょう。
さて、ここでも、全曲を通じて溌溂とした演奏が繰り広げられています。強い推進力を備えたものとなってもいる。
それでいて、この時期の他の演奏が示していた、力感に溢れた演奏ぶりと表現できるような音楽づくりとは一線を画したものだと言えそう。すなわち、過度に強靭な演奏ぶりが示されている訳ではなく、シューベルトの初期の交響曲が持っている優美でチャーミングな性格を大事にしている演奏だと思えるのであります。
必要以上に重々しさを強調せずに、軽妙な音楽が奏で上げられている。そのうえで、この時期のマゼール&ベルリン・フィルによる演奏の特徴と言える、充実感いっぱいな音楽が鳴り響いています。更に言えば、ベルリン・フィルならではの「ふくよかな艶やかさ」が感じられる。

この時期のマゼール&ベルリン・フィルのコンビが、如何に魅力的な演奏を繰り広げていたのかを窺い知ることのできる、素敵な演奏であります。