小澤征爾さん&ボストン響によるR・シュトラウスの≪ツァラトゥストラかく語りき≫を聴いて
小澤さん&ボストン響によるR・シュトラウスの≪ツァラトゥストラかく語りき≫(1981年録音)を聴いてみました。
端正で、凛とした演奏が繰り広げられています。しかも、磨き上げが丹念で、とても美しい。
なるほど、生真面目に過ぎて、面白味に欠けるというきらいはあろうかと思います。もっと起伏に富んでいたり、スリリングであったり、うねりながら突き進んでいったり、といったものがあっても良いのでは、と思わないでもない。
しかしながら、肌理の細やかさや、堅実さや、精確さや、響きのみならず佇まいそのものの美しさや、といったものを備えているこの演奏からは、やはり、大きな魅力が感じられます。絢爛豪華な音楽世界が広がるといったものではないものの、精妙な音楽が鳴り響いている。奥行きの深さや、コクといったものが感じられもする。
そのうえで、必要十分に逞しさを備えていて、シッカリとした生命力を湛えている。足腰の強い演奏だとも言えそう。そして、スリリングではないものの、必要十分にドラマティックでもある。
なお、コンマスのシルヴァースタインがまた、堅実で、かつ、彫りが深いソロを披露してくれていて、こちらも聴き応え十分。
聴いていてドキドキしてくる、といったものはないものの、作品の世界にドップリと身を浸すことのできる演奏であります。何よりも、聴いていて誠に心地が良い。
小澤さんならではの、なんとも見事で、立派な演奏。美演だと言えましょう。