マケラ&オスロ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第5番を聴いて
マケラ&オスロ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第5番(2023年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
あまり深刻ぶるようなことのない演奏となっています。それだけに、重苦しい空気が漂うようことはない。むしろ、晴れやかで爽やかな音楽が鳴り響いている。
とは言うものの、決してひ弱な演奏になっている訳ではありません。推進力に満ちていて、生気に富んだ演奏が展開されている。十分に逞しく、必要に応じて存分に煽ってゆく。ドラマティックで、鮮烈な演奏ぶりが示されてもいる。
それでもやはり、単に力で押し切るだけであったり、ましてや、脅迫的であったり、こけおどしに過ぎないような演奏であったり、といったことはない。実に丹念な音楽となっています。鋭角的になるようなこともなく、むしろ丸みを帯びている。その分だけ、まろやかさが感じられる。しかも、抒情性が強くもある。
そして何よりも、ピュアな美しさを湛えているのが、実に魅力的。冴え冴えとしていて、澄み切った空気に包まれている演奏だとも言いたくなる。
全体を通じて、感受性の豊かな演奏が繰り広げられている。そんなふうに言えるのではないでしょうか。そこここから、マケラの音楽センスの良さが滲み出ている。
この作品の演奏としては、なんともユニークな味わいを湛えた演奏。しかも、頗る魅力的でもあり、ある種、目から鱗が落ちるようだとも言えそう。
「素晴らしい音楽に触れることができた」という感慨の湧いてくる、素敵な素敵な演奏であります。