トスカニーニ&NBC響によるドビュッシーの≪海≫と≪イベリア≫を聴いて

トスカニーニ&NBC響によるドビュッシーの≪海≫と≪イベリア≫(1950年録音)を聴いてみました。

誠に明晰な演奏が展開されています。曖昧模糊したものは、ここには一切ない。そんなふうに言えそうなドビュッシー演奏となっている。
更には、情熱が迸っている。そして、逞しい生命力に溢れている。スリリングでドラマティックでもある。しかも、剛毅な演奏ぶりとなっている。とても輝かしくもある。
そのうえで、しなやかさを備えている演奏となっています。そう、総じて輪郭のクッキリとした演奏が繰り広げられているのですが、線がきつ過ぎるようなことはなく、明朗な音楽が鳴り響いている。頗る晴れやかでもある。
その演奏ぶりは、ミュンシュに似ているとも言えるのではないでしょうか。ミュンシュよりも、トスカニーニの方が、より一層剛毅で毅然としているように思えるのですが。
躍動感に満ちていつつも、端然としていて、均整の取れた音楽となっているところも、いかにもトスカニーニらしいところ。その思いは、とりわけ≪イベリア≫において強く抱かされます。
そして、純度の高い音楽になっている。とても実直でもある。ドビュッシーの音楽が、飾り気のない姿で鳴り響いている、とも言えそう。しかも、頗る生き生きとした形で。

これはもう、ドビュッシーを聴く歓びに、いや、音楽を聴く歓びに満ち溢れている、素晴らしい演奏。そんなふうに言いたくなる演奏であります。