ムーティ&ベルリン・フィルによるブルックナーの≪ロマンティック≫を聴いて
ムーティ&ベルリン・フィルによるブルックナーの≪ロマンティック≫(1985年録音)を聴いてみました。
録音当時、ムーティは44歳。ムーティにとって、最初のブルックナーの録音でありました。相前後してハイティンク&ウィーン・フィルによる同曲の音盤が発売されたこともあって、大きな話題を集めたものでした。
その演奏はと言いますと、とても流麗なものとなっています。そして、明朗で快活でもある。そのような演奏ぶりが、この作品に相応しいと言えましょう。
それでいて、決して重苦しい演奏ではありませんが、腰の軽い演奏になっている訳でもありません。それは、ベルリン・フィルによる厚みのある響きに依るところが大きいのではないでしょうか。更には、ムーティによる音楽づくりがまた、第3楽章を除いた3つの楽章では、やや遅めのテンポを基調としながら音楽をタップリと奏で上げてゆく、といったものとなっている。総じて、平衡感覚のようなものに優れている演奏だとも言えそう。
そのうえで、ムーティならではの歌謡性に溢れた演奏が繰り広げられています。そのことが、この演奏に爽快感を与えることとなっている。
そのような中で、第3楽章の主部でキビキビとした音楽運びが為されていて、なおかつ、この楽章のトリオ部に入ると、テンポをグッと落として歌心に満ちた音楽づくりが施されているのが、なんとも印象的。そんなこんなによって、4つの楽章の中での第3楽章の特殊性のようなものが浮き彫りになっているように思える。
そのような第3楽章を経て、最終楽章では、壮麗な音楽世界の出現する演奏が繰り広げられることとなっている。
ムーティ&ベルリン・フィルというコンビならではの魅力が詰まっている、素敵な≪ロマンティック≫であります。