スターン&ローズ&ワルター&ニューヨーク・フィルによるブラームスの二重協奏曲を聴いて

スターン&ローズ&ワルター&ニューヨーク・フィルによるブラームスの二重協奏曲(1954年録音)を聴いてみました。
ローズ(1918-1984)は、1951年までニューヨーク・フィルの首席奏者を務めていたチェリストであり、退団後はソリストとして活動をしていました。

さて、ここでの演奏はと言いますと、熱気に溢れていて、かつ、輝かしいものとなっています。豊麗でもある。そして、実に強靭なものとなっている。
そのような性格は、何はさておき、ワルターの音楽づくりに依るところが大きいと言えましょう。ここでのワルターによる演奏ぶりは、灼熱のように熱いものとなっています。音楽が、うねりにうねっている。更には、誠に壮麗で輝かしい。これは、ニューヨーク・フィル時代のワルターの特徴そのもの。
しかも、外面的な効果を狙ったものではなく、ひたすらに内的エネルギーを増大させながら、その上で作品が持っている生命力を爆発させてゆく、といった音楽になっているのが、何とも尊いところ。であるが故に、決して大袈裟な音楽となることなく、美しい佇まいを確保した形で、音楽が燃え盛ってゆくのであります。
更に言えば、そのような演奏ぶりが、ブラームスの作品に織り込まれている情熱や、ロマンティシズムや、といったものを、見事な形で描き上げてゆくことに寄与していると言いたい。
そのうえで、ワルターならではの人間味に満ちた滋味深さが溢れ出てもいる。激情的でありつつも、とても円満であり、聴く者を幸福感で包み込んでくれる演奏になっているとも言えよう。そう、頗る親密度の高い音楽が鳴り響いているのであります。
そのようなワルターの音楽に包まれながら、スターンとローズの2人のソリストは、集中力が高く、しかも切れ込みの鋭い、中身の濃い音楽を作りあげてゆく。そのうえで、ワルターの熱気をガッシリと受け止めながら、白熱の演奏を繰り広げくれています。

スターンとローズの充実度の高い演奏とともに、1950年代前半のワルターの魅力を堪能することのできる、見事な、そして素敵な演奏であります。