アンドリス・ネルソンス&バーミンガム市響によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲を聴いて

アンドリス・ネルソンス&バーミンガム市響によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲(2009年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

A・ネルソンスは、1978年にラトビアに生まれた指揮者。2014年にボストン響の音楽監督に、2018年にはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任し、現在、2つの名門オーケストラのシェフを兼任していますが、この音盤は、29歳で首席指揮者に就任したバーミンガム市響を相手に、ポストに就いた翌年にセッション録音されたものとなります。
さて、ここでの演奏はと言いますと、奇を衒ったところが全く感じられない、整然としていて、スッキリしていて、かつ明快なものとなっています。率直で、かつ、瑞々しい感性に裏打ちわせた演奏だとも言えそう。
全編を通じて、目鼻立ちがクッキリとしている。そう、音の粒が立っていて、輪郭線の鮮やかな演奏となっているのであります。しかも、力感も充分。と言いつつも、この時期のストラヴィンスキーに特徴的であった前衛性や野蛮さのようなものが前面に出ている訳ではなく、洗練された佇まいが示されています。
そのうえで、冴え冴えとした音楽となっております。そう、爽快さが感じられるのです。しかも、色彩感に不足がない。端正な中にも、鮮烈さが感じられもする。流動感や抒情性や躍動感にも不足なない。

若き日のA・ネルソンスの、優れた音楽センスがクッキリと刻まれている演奏。
聴き応えの十分な、素敵な演奏であると思います。