ロザンタール&モンテカルロ歌劇場管によるオッフェンバックの≪パリの喜び≫を聴いて

ロザンタール&モンテカルロ歌劇場管によるオッフェンバックの≪パリの喜び≫全曲(1960年代前半の録音)を聴いてみました。

≪パリの喜び≫は、オッフェンバックが作曲した作品からメロディを抜粋しながらロザンタールが編曲したバレエ音楽。そのロザンタールが指揮をしている当盤は、一種の「自作自演」であると言えましょう。
その演奏を聴いての印象はと言いますと、この作品が持っている音楽世界を心行くまで味わうことのできるものである、ということ。
全編を通じて、実に華やかな演奏となっています。聴いていて、ウキウキワクワクしてくる。音楽がリズミカルに弾んでいる。そう、実に軽妙であり、かつ溌剌としているのであります。更には、色彩感に富んでいる。カラッとした空気感を備えていて、明朗な音楽世界が広がってもいる。そんなこんなの演奏ぶりは、バレエ音楽として誠に相応しいと言えましょう。
そのうえで、エレガントな雰囲気が横溢している。とても瀟洒な音楽が鳴り響いています。この辺りは、この作品ならではの味わいをシッカリと引き出してくれているが故だと言いたい。
しかも、決して軽薄な音楽になっている訳ではなく、適度なスケール感が備わってもいる。そう、風格の豊かさのようなものが感じられるのです。
それでいて、随所からノスタルジーが漂ってくる音楽が奏で上げられてもいます。この作品自体が振幅の大きな音楽と言えましょうが、そのような性格が、誇張されることなく自然に描き出されている。そう、決して鬱屈することのない哀愁に彩られている。

そんなこんなによって、聴いていて気持ちが自然と華やいできます。
それは、取りも直さず、この作品が本来的に備えている特質だと言えましょう。そのような、この作品の魅力を的確に汲み取ってくれている、なんとも素敵な演奏となっています。