カルロス・クライバー&ウィーン・フィルによるシューベルトの交響曲第3番と≪未完成≫を聴いて

カルロス・クライバー&ウィーン・フィルによるシューベルトの交響曲第3番と≪未完成≫(1978年録音)を聴いてみました。

なんともしなやかな演奏となっています。音楽が躍動していて、機敏にして快活な演奏が繰り広げられている。
そのようなカルロスの音楽づくりを、ウィーン・フィルのまろやかでふくよかで、柔らかくて艶やかな美音が包み込んでゆく。しかも、反応が頗る鋭敏。音に丸みが感じられつつも、鋭さを秘めている。そのこともあって、音楽が弾け飛んでいます。それは特に、第3番において顕著。実に明朗で、幸福感に満ちた演奏となっている。とは言え、≪未完成≫においても、十二分に弾力性を帯びた音楽が鳴り響いています。
全体的に、キビキビとしていながら構えが大きく、と言いつつも、決して大袈裟な表現になっていない。暑苦しくならない範囲で熱く、そして、逞しさを備えた演奏となっている。この点については、とりわけ≪未完成≫において顕著。≪未完成≫での演奏は、適度に情念的であり、ドラマティックであり、音楽がうねりを上げながら突き進められています。
そんなこんなのうえで、シューベルトならではの抒情性の豊かさや、歌謡性の高さが伝わってくる演奏となっている。息遣いが豊かでもある。そして、冒頭に戻るのですが、なんともしなやかな音楽が繰り広げられている。

実に実に、魅力的な演奏であります。